数年前に大ブームとなり、その後も消えることなく、今やスーパーにも常時陳列されているココナッツオイル。
あの甘い香りが好きで、スイーツを作る際にバターの代わりに使ったり、エスニック料理に使ったり。酸化しにくいので慌てて使う必要もなく、個人的には使い勝手がよくて好き。
しかし、体に良いとブームになったココナッツオイルは、実は体に悪いという噂も。
ココナッツオイルとは?
ココナッツオイルとは、ココヤシの果実(ココナッツ)の種子の胚乳から抽出されたもの。室温が20℃以下だと固まり、20-25℃ではクリーム状、25℃以上で液体となる。酸化に強く、加熱しても劣化しにくい。抽出方法によって品質、香りが異なる。
ダイエット効果あり?
ココナッツオイルの約90%が飽和脂肪酸。飽和脂肪酸と聞くと、漠然と体にはあまり良くないイメージがあるが、ココナッツオイルは飽和脂肪酸の中でも、代謝が早くエネルギーとして使われやすい中鎖脂肪酸が豊富に含まれている。
消化吸収されたら直接肝臓に運ばれケトン体に変換、素早くエネルギーとして代謝され、脂肪を体内に蓄積しにくいという点でダイエットに効果的と考えられた。
しかし、実際ラウリン酸は、他の中鎖脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸)ほど燃えやすくはなく、長鎖脂肪酸と同じように処理されるとも言われている。
そして、ココナッツオイルは、約60%が中鎖脂肪酸だが、残りの多くが体脂肪として蓄積しやすい長鎖脂肪酸。
ダイエットに抜群に効果的かはちょっと怪しいかも。
それらの効果を期待するなら、カプリル酸やカプリン酸100%のMCTオイルを摂取したほうがいいような?
長鎖脂肪酸を多く含む油脂の代わりにココナッツオイルを摂取するならば、もしかしたらダイエット効果はあると言えるのかもしれない。
また、糖質制限をしている方には、不足しがちなエネルギーを補ってくれる存在として重要な働きをしてくれるかも。
今のところ、毎日ココナッツオイルを摂取さえしていれば簡単に痩せられる、ということではなさそうだ。
免疫力アップ?
ココナッツオイルは、その中鎖脂肪酸に、ラウリン酸という成分が含まれている。このラウリン酸は母乳にも含まれている成分であり、抗菌活性を持つと考えられ、免疫力を高めると期待された。
しかし、それについても、まだ不確かな部分がある。
ラウリン酸に抗菌作用があることは確認されてはいるものの、それは試験管での実験であり、超高濃度のラウリン酸だったとか。臨床実験では有効性はまだ確認されていない。
確かに母乳にラウリン酸は含まれているが、わずかであり、母乳に含まれる免疫成分は、主に分泌型IgAやラクトフェリンなどが知られている。
ココナッツオイルの広告でよく目にする、ラウリン酸のおかげで赤ちゃんは免疫が保たれている!というのはちょっと誇大宣伝の匂いがするような。
さらなる研究が必要だが、効果はゼロではないと信じたいところ。
そして、ココナッツオイルはあくまでも飽和脂肪酸だということを忘れてはならない。
飽和脂肪酸は悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを増やし、動脈硬化性疾患のリスクが上がる可能性があるということも一つの事実である。
認知機能の改善?
しかし、一方では、期待されている面もまだある。
お年寄りや糖尿病の方は、脳のエネルギー源であるブドウ糖を脳細胞が適切に吸収できていない場合が多く、その場合、中鎖脂肪酸を含むココナッツオイルを摂取し、ブドウ糖に代わってケトン体で脳にエネルギーを補うことで、脳細胞の破壊を防いだり、認知機能の改善ができるのではないかと期待されている。
つまり、ココナッツオイルには良い面もあり、そうでもない面もある。そして実際にまだはっきりしていないこともたくさんある。
少なくとも、ココナッツオイルは、摂取するだけで簡単に痩せられて、免疫力も高められる魔法のオイルではなさそうだ。
やはり何事もバランスが大事。いくら良いものでも取りすぎたら逆効果の場合もあるだろう。
中鎖脂肪酸や、不飽和脂肪酸などそれぞれの長所を上手に活かしながら、いろいろな種類の質の良い油脂を選ぶ必要があると思う。
毎日せっせとココナッツオイルを摂取するのではなく、たまに甘い香りを楽しみながら摂取するくらいがちょうどいいのでは?
ココナッツオイルを選ぶ際は、低温圧搾で化学処理をしていないエキストラバージンは必須!
そして、できればオーガニックのものを。